河原文翠の日々是好日

降っても 照っても 日日是好日。泣いても笑っても 今日が一番いい日。

刎頸の交わり


                  刎頸の交わり(ふんけいのまじわり)

 

友人とは、その相手が親しければ親しいほど、お互いの家の行き来はしない。
なせかというと、よその家にはどこだって秘密があるし、子供もいるし、趣味も違うんだ。それを見せつけられるのは嫌だし、見たくない。そういうものを見ると、つい何かのときに感情が出てしまう。競争心や羨望の気持ちをあおることになりかねない。私はそうしたトラブルは非常に大きいと思うんです。訪ねていかなければ、何でもないんだから。

 

文字どおり心を許し合った仲である高校時代からの親友であるM君とだって、彼が営んでいた店でしか会わなかった。向こうもうちには来ないし、こっちも行かない。ああ、長い付き合いのなか、一度だけ何かの都合で彼の家に行った。ただ、玄関で話しただけで中には入らなかった。それがいいんだと思う。

 

彼とはお互いの最後についても約束している。たとえ亡くなったとしても彼に連絡は絶対にするなとお互いの家族に厳命している。彼の死に顔を見たくないし、私の死に顔も見せたくない。何時までもお互いの青春時代のお互いでいたいからだ。49日法要が終わってから、亡くなりましたと彼に連絡する様に、仏壇にお参りするなんて無用で、空に向かってお別れをして下さいとの遺言ですと伝えて貰えたらそれで良い。

 

家族からは、変わった人達と呆れられているが、そういう交友関係もあってもいいと思っている。