河原文翠の日々是好日

降っても 照っても 日日是好日。泣いても笑っても 今日が一番いい日。

絶体絶命

       
                                  四 字 熟 語


                                  絶体絶命 (ぜったいぜつめい


絶体も絶命も破滅の星まわりだから、これ以上の危機はない。絶体は体を絶ち切られること、絶命は命を絶たれること、これを重ねて絶体絶命になると、危険に直面してどうしても逃れることが出来ない、そういう切羽詰まった立場に陥ることだ。
野球では、絶体絶命のピンチなんて言い方もする。孤軍奮闘でいかに頑張っても、運のない時はいたしかたない。絶体絶命の窮地に追い込まれる事が誰の人生にもあるのだ。

 

ところでこの四字熟語ほど、うっかりミスを誘う言葉もあるまい。口では絶体絶命と正しく発音しながら、書く段になると、十人に八人が絶対絶命と書いてしまう。絶対安静なんて言い方もあるせいか、絶対と書いてもミスに気付かないで終わってしまうが、ここは絶体絶命と書かないと、絶対に間違いである。

 

愛くるしいを愛苦しい、一目惚れを人目惚れ、一抹の不安を一味の不安、と書く大人がいるくらいだから、絶対くらいはやむを得ないミスだよ、と言うわけにはいかない。

 

 

夏炉冬扇

      

                                      四 字 熟 語

 

                                   夏炉冬扇 (かろとうせん)

 

 

世の中に役にたたないものが果たしてあるのかないのか、答えは微妙でむずかしいところだが、夏の暖炉と冬の扇子は確かにその時季役にたたない。夏の暖房器具と冬の冷房装置と言い換えてもいいが、それじゃあまりに風流でなくなる。

 

やはりここは夏の暖炉と冬の扇子、すなわち「夏炉冬扇」は時季外れで無用の長物だから、役に立たないものを引っくるめて夏炉冬扇という。これも中国古典からきた言葉で、「以夏進炉、以冬奏扇」とうのが原文である。

 

私の友人に川柳好きがいて、色紙を頼まれたことがある。常々この友人は「川柳なんてのは夏炉冬扇のたぐいでね、何の役にもたたんと思っていたが、歳をとると、どうしてどうして川柳は役に立つ。人付き合いにも必要だし、自分の心の整理にも役立つ」と必要以上の効用を強調していた。

 

そこで私は荘子」から引用し、『無用の用』 と色紙に書いてみた。「世の中で無用なるがゆえに自分には有用だ」というほどの意味だが、やっと現代人も「無用の用」の価値がわかってきたように思う。

 

 

波瀾万丈

      

                                四 字 熟 語

 

 

                              波瀾万丈 (はらんばんじょう)

 

 

大衆の好む言葉だ。誰しも自分の人生は波瀾万丈でないほうが望ましいが、それじゃ刺激がなくてつまらない、せめて他人の人生の波瀾万丈ぶりを見て楽しみたい、そんな気持ちかもしれない。浮き沈みが激しい、変化がきわまりない、次から次へと事件などが展開変化して定まらない様子、これが波瀾万丈である。

 

波瀾万丈の生涯を送った人はその一生が小説やドラマにもなるし、波瀾万丈の事件は誰もが興味津々で成り行きを見守る。会話でも文章でも広く使われる四字熟語だが、若い人たは、大げさで古めかしい表現ゆえにあまり好まないように思う。

 

「姓名判断」などという本を参考に子供の名づけを考えるご両親が今でも大勢いらっしゃるが、親が子に託す人生の希望は決して波瀾万丈の生き方ではない。平凡で堅実な運勢をベースに、その上に才能が開花し幸運に恵まれる、それが理想だ。

なぜ波瀾万丈が敬遠されるかといえば、不安定で劇的すぎるからではないか。

人はみんな安定をいちばん望んでいる。

 

八紘一宇

 
                               四 字 熟 語


                              八紘一宇  (はっこういちう)
                                 

最近はめったに聞かないが、大東亜戦争当時は凄かった、どっちを向いても八紘一宇のオンパレードだったらしい。我が国の軍部が暴走し、世界制覇の野望のもとにこの四字熟語をスローガンにしたらしい。当時の青少年はひとり残せずこの言葉を頭に叩き込まれた。

 

意味がわかっていたかどうか疑わしいが、全世界を一家のように統一し支配する、これが八紘一宇の思想である。八紘は四方とと四隅の意で、天下のこと。地上の全ての方面で全世界のこと。宇は家という意味だから一宇は一家である。

 

戦時下にもてはやされた言葉だけに、イメージはよくない。が、軍国主義に利用された不幸な歴史を忘れるならば、出典は遠く日本書紀『にさかのぼる。原文を一部だけ抜粋すれば、「掩八紘而為宇」すなわち「あめのしたをおおいていえとなさん」 。決して悪いイメージではない。なお類似の語として、四海兄弟、四海同胞なんてのもある。

 

世界中の人たちみんなが兄弟のように仲良くする、同じ祖国を持つ人のように一丸となる、という意味だ。

 

 

栄枯盛衰

  
                                       四 字 熟 語


                                   栄枯盛衰 (えいこせいすい)
                                 

       栄枯盛衰は世の習いとか。 人も会社も例外ではない。
栄えたり衰えたり、繁栄と衰亡は交互にやってくる、これが歴史の流れらしく、この様子を栄枯盛衰という。これは仏教の考え方と思われるが、経典には生者必滅とある。生ある者は必ず死ぬ、この事実は誰も曲げられない。

 

また経典には盛者必衰という四字熟語もあって、これは『平家物語』 の「沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらわす」の有名な冒頭でおなじみ。盛んなる者は必ず衰えるという考え方は、栄枯盛衰と共通する。 『平家物語』はこの句の前に、「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり」。学生時代にはただ読みすごしていたこれらの言葉が、年齢とともに実感を増すのではなかろうか。

 

老荘思想でも、「物壮則老、是謂不道」の一句がある。壮は盛に通ず、壮者必衰といってもいいだろう。また、「兵強則滅、木強則折」という句もあって、これも強なる者、盛なる者がいずれ衰え滅びることを喝破したものである。

 

 

 直情径行

      
                                 四 字 熟 語


                               直情径行 (ちょくじょうけいこう


独断専行とニュアンスは似ている。他人の思惑などおかまいなしに自分の感情のおもむくまま単純な行動に走る、これが直情径行である。必ずしもマイナスの生き方とはいえないが、少なくとも大人の世界では敬遠され評価が低くなる。

 

直情は感情のままにふるまい、思いつきを相手かまわず口に出すことだし、径行は自分の思った通りに直ちに行動することだから、相手にとっては扱いにくい。「彼は直情径行型の人間で憎めない性格だけど、独りよがりで浮き上がっているんだ。もう少し押さえがきいて大人になってくれると、大成するんだが」などと評される。率直さ、飾り気のなさはいいが、感情に走る単純な言動が周りと不協和音を醸し出すのであろう。

 

しかし、と私が最近しみじみ思うのは、現代の若者は元気がないわりにこのタイプが多いのでは? 過保護に育てられたせいか、自己抑制が効かないし忍耐力もない。そこで直情径行に走りがちで、世間ではこれを軽いノリなどとおだてたりする。

 

 

 独断専行

      
                            四 字 熟 語


                           独断専行 (どくだんせんこう


付和雷同も困るが、これも困る。独断は自分だけの考えや判断で勝手に決めること、専行は自分勝手に自分の思う通りに行動すること。独断専行は自分の判断だけで勝手気ままに行動することをいう。つい独断先行と書きがちで、これはこれで意味が通じるが、正しい字は専行だから念のため。

 

「独断専行を厳に慎め」と上司から言われた時、あなたはハイと従うか。もちろんサラリーマンなら従うだろうが、じゃ付和雷同がいいのかといえば、これもダメ。となるとどっちもダメじゃ立場がない、こうなってしまう。その中間がいいのだ、と上司は軽く言うかも知れないが、これも無責任な話と下の者は受け取るだろう。

 

現代では、独断専行のほうにむしろ軍配があがる。独断と偏見はマスゴミの人気を得るコツの一つだし、それは個性的でもある証拠だから、付和雷同よりはこっちのほうがまだ見どころがある。とはいえ、調子に乗ってやたらと独断専行に走ると、周囲に迷惑を及ぼし自分が窮地に陥るからこわい。