河原文翠の日々是好日

降っても 照っても 日日是好日。泣いても笑っても 今日が一番いい日。

夏炉冬扇

         
                      四 字 熟 語


                         夏炉冬扇 (かろとうせん)


世の中に役にたたないものが果たしてあるのかないのか、答えは微妙でむずかしいところだが、夏の暖炉と冬の扇子は確かにその時季役にたたない。夏の暖房器具と冬の冷房装置と言い換えてもいいが、それじゃあまりに風流でなくなる。

 

やはりここは夏の暖炉と冬の扇子、すなわち夏炉冬扇は時季はずれで無用の長物だから、役にたたないものを引っくるめて夏炉冬扇という。これも中国の古典からきた言葉で、「以夏進炉、以冬奏扇」というのが原文である。

 

私の友人に俳句好きがいて、色紙を頼まれたことがある。常々この友人は「俳句なんてのは夏炉冬扇のたぐいでね、何の役にもたたんと思っていたが、歳をとると、どうしてどうして俳句は役にたつ。人づきあいにも必要だし、自分の心の整理にも役立つ」と趣味以上の効用を強調していた。

 

そこで私は『荘子』から引用し、「無用の用」と色紙に書いてみた。「世の中で無用なるがゆえに自分には有用だ」というほどの意味だが、やっと現代人も「無用の用」の価値がわかってきたように思う。   しかし今年の夏は暑すぎる、まさに夏炉真っ盛りである。