河原文翠の日々是好日

降っても 照っても 日日是好日。泣いても笑っても 今日が一番いい日。

山紫水明


                                      四 字 熟 語


                                          山 紫 水 明   


「この連休は山紫水明の地に行ってみたいね」と老人が言う。若い連中は聞いただけでは意味不明、漢字を見てなんとなくわかる。読みくだせば、山は紫で水は清い、美しい自然のことかな、と見当がつくわけだ。山紫水明とは、日に映えて緑の山は紫にかすみ、川の水が清く澄み切ってはっきり見える、誠に美しい自然の風景を形容した四字熟語である。

 

ただし感覚的にどうも古い。今どきこれじゃ笑われそうなので、老人たちも若返ったつもりで、「風光明媚なところで、命の洗濯をしてみたいね」、これなら現代の観光用語である。風向は景色とか眺めのこと、明媚は山や川が清らかで美しいこと、つまり自然の風景の美しさを風光明媚と形容するわけで、山紫水明もこれも根っこは一つと思っていい。

 

古くから今に至っても使われるものとして、深山幽谷は覚えておいたほうがいい。奥深い山と奥深い静かな谷のことだが、人跡まれなる静かな自然のたたずまいは、このほかにふさわしい表現が見あたらない。