昭和のあの頃
過ぎ去った遠い日々に、思いを馳せる。
それによって、心に喜びを感じさせる。
不安なコロナ時代、良かったことを考えながら。
その5 そば屋の出前
「そば屋の出前」という諺がある。
遅れを咎められたことに対して、当てにならない、安易な対応を取ること。 遅延している事柄について「今、やってます」のように安易な返答をする様子。 そば屋で注文した出前が来ず、しびれを切らして電話してみると、「今ちょうど出ましたんで」と言われる、といった状況になぞらえた表現。
昭和のなつかし風景のひとつに「そば屋さんの自転車での出前風景」ってありますよね。今では原付での出前が多いのでなかなかそういった光景を目にすることは無くなりました。で、今あらためて見てみると当時のそば屋さんの出前テクニック「ザ・タワー」が凄すぎるんです。何が凄いって「どんだけ積むの?」と突っ込んでしまいたくなるほどせいろや丼ぶりが何段にも積まれた状態で自転車を片手運転しちゃってるわけです。
当時は「出前コンクール」なるものが開催されていたようで、そのトップになったお蕎麦屋さんは、昼食時のオフィスに対応すべく多い時では100人分の出前を載せていたそう。こういった出前風景が見られなくなった要因のひとつとして、自転車やオートバイの荷台に「出前機」という運搬機を付けて運転からくる振動に対応できるようになった事も挙げられますが、この出前機もまた日本の技術力とアイデアによって生まれたものなんです。
交通量の増加によって出前時の事故が多くなってきたことに心を痛めた当時の蕎麦屋さんの店主が、昭和20年後半に実用化に成功したそうです。