河原文翠の日々是好日

降っても 照っても 日日是好日。泣いても笑っても 今日が一番いい日。

初志貫徹


                                       四 字 熟 語


                                          初 志 貫 徹 


初志は最初に思い立った時の謙虚で真剣な気持ち、初心と言い換えてもいいが、世阿弥の言葉に「初心忘るべからず」とあるように、人間は何事であれ、最初の決心を忘れてはいけないと私も教えられた。これが実は難しい。苦しいから挫ける、辛いから逃げる、困難だから諦める、気持ちが変わったから忘れる、これじゃ本物になれっこない。

 

諺にも「初一念が大事」とある。始めの心構えを忘れず大事にしておくことが物事を成し遂げるコツかな、とわかっていても、時代も変わるし自分も変わる、心変わりも不思議ではない。だからこそ、それじゃいかん初志貫徹せよ。挫けず、諦めず、初心は最後まで貫き通せ、というわけだ。

 

確かに虚仮の一心と言われようが、初志を貫徹して大成する人は立派で尊敬に値する。しかし私たち凡人は貫徹も大事だが、諦めや妥協も必要だ。自らの才能や素質に見合う人生を選択することのほうが大切ではなかろうか。いたずらに初志貫徹にこだわるのは不幸であると思う。

 

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言行一致


                                      四 字 熟 語


                                             言 行 一 致 


尊敬と信頼を得るためには言行一致でなくてはいかん、タテマエはたしかにこの通りだが、言うは易く行うは難し、口に出して言うことと実際に行うことが同一である人物など、そう沢山はいない。

 

「お金よりココロだ、ココロを正しく持てばお金など不要」とお説教するセンセイがカネの亡者だったり、学歴無用論を説く社長の息子は一流大学の学生であったり、女性の味方をを自認するフェミニスト評論家が愛人持ちで本妻と別居中だったり、こういう言行不一致は世間に掃いて捨てるほどある。

 

人間だからある程度の不一致はやむを得ぬとして、元々実行する気がないのに営業上もしくは世間体のため綺麗事を口にする輩はいやらしい。何故かこういう連中がマスコミの人気者であるのも興味深い。マスコミもタテマエは言行一致、ホンネは言行不一致なのであろう。

 

むしろ日本人好みの美徳は、不言実行である。モノ言わずして実行が先に立つ、こういう人こそ尊敬され信頼されるはずだ。

 

 

艱難辛苦


                                  四 字 熟 語

              
                                       艱 難 辛 苦 


苦労や努力は誰しもイヤだから、こういう四字熟語も影が薄くなった。
困難や辛い目にあって非常に苦労する、これが艱難辛苦だが、それを乗り越えて目的を達成する喜びなど現代の若者には多分わかるまい。努力しないで成功し、苦労しないで栄光を獲得するほうがカッコいいと思っているからだ。スポーツや芸事の世界でも、艱難辛苦なんてオーバーな表現は使わなくなった。

 

同類語に、粒々辛苦がある。粒はお米の一粒、粒々だからお米の一粒一粒が農業者の辛苦によって作られたという思い入れを踏まえ、目的達成のためコツコツと地道な苦労を積み重ねることを粒々辛苦というのだか、機械化が進んだ現代ては、こういう表現ももはやピンとこない。まだ暗いうちに起きて野良仕事に出かける農夫の姿を殆ど見かけないのと同様、粒々辛苦の四字熟語もマスコミですらめったに見かけない。

 

また辛労辛苦なんてのもあるが、なにも好きこのんで辛い苦労をすることもないや、と私だって思う。

 

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支離滅裂


                                   四 字 熟 語

            
                                        支 離 滅 裂 


会話や文章にまとまりがなく、ちりぢりばらばら乱れまくって筋道が立ってない、こんな様子を支離滅裂という。物事すべて何が何だか訳がわからない状態にも応用できる。
「あいつは失恋のあまり言動が支離滅裂だから相手にするな」という程度ならまだ救われるが。「彼の精神状態は昔から支離滅裂だ」なんて決め付けられたらもう救いがない。

 

最近若い人たちの造語でシッチャカメッチャカなんてのがあるが、支離滅裂から派生したものと思われる。テレビのアナウンサーやキャスターたちのコメントも、時として支離滅裂だ。とくに書かれた原稿の読み違い、根っからの覚え違いなど原因は色々だが、結果だけアラさがしすると、信じられないミスが少なくない。

 

渦中をウズナカと読み、病床をビョウトコ、頒布をリョウフ、案山子をアンザンシ、お土産をオドサン。傑作は好々爺をコウコウジジイ、中にはスキスキジジイと覚えているタレントがいるから、視聴者の頭の中も、支離滅裂になりますね。

 

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余裕綽綽


                                    四 字 熟 語


                                         余 裕 綽 綽 


余裕はユトリで、綽綽はゆったりして落ち着いている様子。「試験が近いのに余裕綽綽だね」といえば、落ち着き払ってあせらない、あわてない、自信たっぷり、そういう場合だが、現実にそんな人は滅多にいない。虚勢を張ってるか、カラ元気か、カッコつけてるだけで、他人様には余裕綽綽と見えようが、本人は緊張のかたまりで、そわそわ、ドキドキが実態であろう。

 

ところで綽綽だか、最近の若者たちはタクタクと読んでしまう。書くのはもっと苦手で半数以上は綽綽と正しく書けず、中には余裕尺尺なんてのもある。私自身も余裕しゃくしゃくと書く。この方が感じが出ると勝手に思っているわけだが、難しい漢字はむしろ、平仮名の方が読み易くて気分が出るのではなかろうか。

 

二股膏薬(節操のないこと)は二股ごうやくでもいいし、乱暴狼藉(荒々しく無法な行い)は乱暴ろうぜきでいいと思う。正しく書けるに越したことはないけれど。

 

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一罰百戒


                                    四 字 熟 語


                                          一 罰 百 戒


見せしめに一人の悪人を処罰し、他の百人が罪を犯さない様な戒め、これが一罰百戒である。本来なら百人全部すなわち大勢を罰すべきだが、いたずらに罪人を作るよりむしろ自戒させ犯罪に走らぬ様な脅しのために一人を罰するわけだから、生け贄になった代表選手(?)はたまったものではない。

 

身近な話では交通違反の取り締まりや公務員の汚職摘発などが一罰百戒に近いと思うが、早トチリのOLが「これ、ひょっとして×一のこと?」と言ったのには驚いた。「離婚一回がバツイチでしょう、もう男にはこりごりで結婚したくないという重い戒めの言葉が一罰百戒ね」、この珍解釈は受けを狙うジョークだったが、現代女性の日本語感覚にはついていけない。

 

一罰をひっくり返してバツイチと読み、めしのことをシーメ喰うか、本物をモノホンという逆さ言葉のほかに、ケツ出した、オカマ掘られた、ナンパされた、イッパツやったなど男顔負けの乱暴な会話はただ恐れ入るばかり。親のことを「てめえ、バカヤロー」と怒鳴りつける娘もいる。

 

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緊褌一番


                                     四 字 熟 語


                                         緊 褌 一 番


褌はふんどし、緊褌は褌を固く締めること、大いに心も引き締めて事に立ち向かうのを緊褌一番という。文字通り褌を締めるだけなら緊褌一番とは言わない。「緊褌一番、明日の受験にのぞめ」と昔のオヤジは息子にハッパをかけたものだが、今の過保護ママは受験に付き添いこそすれ、「褌を締める」などとは冗談にも言わないだろう。

 

緊褌一番が大勝負の前の心構えであったのも時代遅れになってしまった。その反動でもあるまいが褌の方はヘンな市民権を得た。褌ルックやTバックなんてのが日常語になるくらい、女性たちは“ふんどし”の四文字に以前ほど嫌悪感を持たないようだ。
かつてデパートの売り場で、女子店員に褌と言わせるのは品がないとかで、これをクラシックパンツと新語化していたのがウソみたい。

どうやら褌は男の物ではなく、女性専用のおしゃれ着(?)になってしまうのかも。

 

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